昨年11月28日にNPO福島ダイアログ主催第23回福島ダイアログ「処理水をめぐる課題を福島で考える 世界と考える」 を開催してから、半年が経過いたしました。(ダイアログの記録はこちらとこちら)
当日の模様については、NHK、朝日新聞、毎日新聞、産経新聞、福島テレビ、TUFなどメディアでも広く取り上げられ、大きな反響をいただきました。また、その後も共同通信、日本経済新聞、NHKに理事長安東量子のコメントが掲載されるなど、難しい課題について賛否にとらわれず公に語り合うダイアログの試みの意義は、高く評価されたものと感じています。
ひるがえって、現在の処理水にかかわる状況を見ると、原子力規制委員会において放出設備の設置が了承されるなど、手続面は粛々と進められている一方、関係者や一般国民は置き去りにされたままであるように感じられます。私どものもとにも、本当にこれでいいのか、といった懸念の声が寄せられております。
昨年のダイアログでの意見交換で確認されたのは、関係する人びとは、それぞれに意見や考えを持っており、また、自分たちの力で現実に向き合いたいと望んでいるということでした。ALPS処理水に限らず、放射性廃棄物の処理場や原子力施設の周辺では、地域住民や関係者が不安を抱くのは一般的なことです。それにともなって社会的な衝突が起きやすくなるのは、日本だけでなく世界共通の現象であることも、海外の参加者からの事例紹介で認識されました。ほとんどの場合、廃棄物や施設が存在する限り、こうした不安や社会的な対立は長期化するものです。これに対して、政府や事業者からの一方的なコミュニケーションで、事態が解決することはあまり望めないことも、過去の事例から明らかです。
ALPS処理水については、放出決定のタイミングが福島県沿岸漁業の本格操業再開の時期に重なり、地元関係者にしてみればもっともセンシティブな時期に、意に反した政府の動きがおこなわれることになってしまいました。放出が開始された場合、期間も数十年の長期に及びます。であるにもかかわらず、十分なコミュニケーションがとられず、また、今後もコミュニケーション態勢が確保されないまま、放出が行われるようとしていることについては、強い懸念を感じざるを得ません。
原子力災害からのよりよい復興を目指すのであれば、地元や関係者の意見が反映されるためのコミュニケーション態勢は必須であると考えます。ダイアログの時にも申し上げたように、私どもNPO福島ダイアログは、今後も必要に応じて、関係者間の対話の場を設けていくつもりでおりますが、行政においても、一方通行の説明や広報・宣伝ではなく、地元や関係者と双方向で意見交換し、それを施策に反映させていける話し合いの場の重要性を認識いただけることを強く期待致します。
2022年6月30日
NPO法人福島ダイアログ